棘上筋(きょくじょうきん)という名前を、初めて聞いたという方も多いかもしれません。
棘上筋は、肩関節の動きに関わる筋肉のひとつで、腕を上げる動きや肩関節の安定に関係する重要な筋肉です。
普段の生活ではあまり意識することのない筋肉ですが、私たちが日常生活の中で腕を動かすときには、知らないうちにこの筋肉が働いています。
例えば、
- 洗濯物を干す
- 高い場所の物を取る
- 手を上げる
- 髪を洗う
といった動作です。
このような腕を上げる動きでは、肩の周りのさまざまな筋肉が協力して働いています。その中でも棘上筋は、腕を上げ始める動きをサポートする重要な筋肉として知られています。
ここでは、棘上筋がどのような筋肉なのかを見ていきましょう。
棘上筋とはどんな筋肉?
棘上筋は、肩関節の奥の方にある筋肉で、肩のインナーマッスルの一つです。
インナーマッスルとは、体の深い部分にある筋肉のことで、主に関節を安定させる役割を持っています。表面にある筋肉のように大きく目立つわけではありませんが、関節をスムーズに動かすためにはとても重要な働きをしています。
肩関節は、人間の関節の中でも特に動きの大きい関節です。腕を上げたり、回したり、後ろに引いたりと、さまざまな方向に動かすことができます。
ただし、その反面、構造的にはとても不安定な関節でもあります。腕の骨(上腕骨)の頭は丸い形をしており、肩甲骨のくぼみに乗っているような構造になっているためです。
この不安定な肩関節を安定させながら動かすために働いているのが、棘上筋を含むインナーマッスルなのです。
腱板(ローテーターカフ)との関係
棘上筋は、腱板(ローテーターカフ)を構成する筋肉の一つです。腱板は、正確には回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)と言いますが、わかりやすく腱板と記載していきます。
腱板とは、肩関節を安定させる働きを持つ筋肉のグループのことで、次の4つの筋肉から構成されています。
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋


これらの筋肉はすべて肩甲骨から始まり、腕の骨(上腕骨)に付着しています。そして、腕の骨の頭を包み込むように配置されています。
そのため、腱板は肩関節を支えるインナーマッスルのグループと考えることができます。
腱板の筋肉が協力して働くことで、腕の骨の頭が関節の中心に保たれ、肩関節が安定した状態で動くことができるのです。

その中でも棘上筋は、腕を上げる動きの最初の部分に特に関わる筋肉として知られています。腕を横に上げる動きでは、まず棘上筋が働き始め、そのあと三角筋などの筋肉が強く働くことで腕がさらに上がっていきます。
このように棘上筋は、肩の動きのスタートを支えると同時に、肩関節を安定させる役割も持つ、とても重要な筋肉なのです。
棘上筋はどこにある筋肉?
棘上筋は、肩関節の奥の方にある筋肉です。
肩の表面からは少し分かりにくい場所にありますが、肩甲骨と腕の骨(上腕骨)をつなぐように存在している筋肉です。

肩の周りには多くの筋肉があります。三角筋のように体の表面にある筋肉もあれば、棘上筋のように関節の奥で働く筋肉もあります。
棘上筋はその中でも、肩関節の深い部分で働くインナーマッスルの一つです。
表面から触れることは難しい筋肉ですが、肩関節の安定や腕の動きに大きく関わっています。
では、この棘上筋が具体的にどのような位置にあるのかを見ていきましょう。
肩甲骨の上にある筋肉
棘上筋は、肩甲骨の後ろ側にあるくぼみから始まる筋肉です。
肩甲骨の後ろ側には、中央を横切るように骨の出っ張りがあります。
この部分を 肩甲棘(けんこうきょく) と呼びます。
肩甲棘は、肩甲骨を上下に分けるような構造になっており、
- 上側のくぼみ
- 下側のくぼみ
の2つに分かれています。
このうち、肩甲棘よりも上にあるくぼみを 棘上窩(きょくじょうか) と呼びます。
棘上筋は、この棘上窩というくぼみから始まります。
つまり名前の通り、「棘の上にある筋肉」という意味になります。

棘上窩から始まった筋肉は、肩の外側へ向かって伸びていきます。
上腕骨に付着する
棘上筋は、肩甲骨から始まり、最終的には腕の骨(上腕骨)に付着します。
具体的には、上腕骨の外側にある 大結節(だいけっせつ) という部分に付いています。
上腕骨の大結節は、腱板の筋肉が集まって付く場所でもあります。


棘上筋だけでなく、
- 棘下筋
- 小円筋
といった腱板の筋肉も、この大結節の周辺に付着しています。
つまり棘上筋は、
- 肩甲骨(棘上窩)から始まり
- 上腕骨(大結節)に付く
という形で、肩甲骨と腕の骨をつないでいる筋肉なのです。

このような構造によって、棘上筋は肩関節の動きに直接関わることになります。
肩関節の上を通る筋肉
棘上筋は、肩関節の上側を通るような位置にあります。
肩甲骨から伸びた筋肉は、途中から 腱(けん) という丈夫な組織に変わり、肩関節の上を通って上腕骨に付着します。
このとき、棘上筋の腱は
- 肩峰(けんぽう)
- 肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)
といった構造の下を通るような形になります。

肩峰とは、肩甲骨の一部で、肩の一番外側にある骨の出っ張りのことです。
肩を触ると感じる骨の部分が、この肩峰です。
棘上筋の腱は、この肩峰の下を通るため、腕を上げる動きの中で圧迫を受けやすい位置にあります。
負担がかかりやすい筋肉
棘上筋は、肩関節の上を通る位置関係のため、負担がかかりやすい筋肉としても知られています。
腕を繰り返し上げる動作では、棘上筋の腱が肩峰の下で擦れたり圧迫されたりすることがあります。
例えば、
- スポーツで腕をよく使う場合
- 繰り返し腕を上げる作業
- 長年の肩の使用
などによって、少しずつ負担が積み重なることがあります。
このような構造的な特徴もあり、腱板の筋肉の中でも 棘上筋は特にトラブルが起こりやすい筋肉といわれています。
棘上筋の起始・停止
筋肉について説明するときには、よく 「起始(きし)」 と 「停止(ていし)」 という言葉が使われます。
簡単に言うと、
- 起始:筋肉が始まる場所
- 停止:筋肉が付く場所
のことです。
筋肉は、骨から骨へとつながることで関節を動かしています。
筋肉が縮むことで骨が引き寄せられ、その結果として関節が動く仕組みになっています。
棘上筋も同じように、肩甲骨から腕の骨へとつながることで肩関節を動かす筋肉です。
ここでは、棘上筋の起始と停止について見ていきましょう。
起始:棘上窩(きょくじょうか)
棘上筋は、肩甲骨の後ろ側にある「棘上窩(きょくじょうか)」というくぼみから始まります。
肩甲骨の後ろ側には、横方向に伸びる骨の出っ張りがあります。
この部分を 肩甲棘(けんこうきょく) と呼びます。


肩甲棘は、肩甲骨を上下に分けるような構造になっており、
- 上側:棘上窩
- 下側:棘下窩
という2つのくぼみに分かれています。
棘上筋は、この 肩甲棘より上にある棘上窩 から始まります。
棘上窩の内側から外側に向かって筋肉が広がり、そこから外側へ向かって伸びていきます。
肩甲骨は、腕の動きに合わせて動く骨でもあります。そのため棘上筋は、肩甲骨の動きと連動しながら肩関節の動きに関わる筋肉でもあります。
停止:上腕骨大結節(だいけっせつ)
棘上筋は、最終的に上腕骨の大結節(だいけっせつ)という部分に付着します。
上腕骨は腕の骨ですが、その上端にはいくつかの骨の出っ張りがあり、その中でも外側にある大きな出っ張りは『大結節』と呼ばれています。
この大結節には、腱板を構成する筋肉の腱が集まって付着している特徴があります。
具体的には、
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
といった筋肉が付着しています。
棘上筋は、肩甲骨から始まった筋肉が途中で腱(けん)という丈夫な組織に変わり、肩関節の上を通って大結節に付着します。この腱の部分を棘上筋腱と呼び、腱板損傷などの肩のトラブルでは、この部分に問題が起こることが多いです。
支配神経:肩甲上神経
棘上筋を動かしている神経は、肩甲上神経(けんこうじょうしんけい)。
神経は、脳や脊髄から筋肉へ「動きなさい!」という指令を伝える役割を持っています。この指令が神経を通って筋肉に届くことで、筋肉は収縮し、関節を動かすことができるのです。
肩甲上神経は、首の神経(腕神経叢)から分かれて肩の方へ向かい、棘上筋や棘下筋を支配しています。つまり、この神経からの信号によって、棘上筋は腕を上げる動きや肩関節の安定に関わる働きをすることができているというわけです。
棘上筋の役割
棘上筋は、肩関節の動きと安定に関わる重要な筋肉。
特に、
- 腕を横に上げる動き
- 肩関節を安定させる働き
に関係しています。
日常生活の中でも、腕を上げる動作はとても多く、棘上筋はその動きを支える大切な役割を担っています。
腕を横に上げる動き(外転)
棘上筋の代表的な働きは、腕を横に上げる動き(外転)です。
例えば、
- 物を棚に置くとき
- 洗濯物を干すとき
- 手を上げるとき
などの動作で使われています。
腕を横に上げる動きでは、主に三角筋という筋肉が強力に働きますが、棘上筋はその動きの最初の部分(外転初期)をサポートする役割があります。
つまり、腕を上げる動きの「スタート」を助ける筋肉なのです。確かに三角筋は強力な力を持った筋肉なのですが、挙げ始めではうまく力を入れて骨に伝えることができない弱点を持っています。そこで、棘上筋が三角筋の得意とする角度まで頑張ってくれているわけです。


肩関節を安定させる働き
棘上筋は、腕を動かすだけでなく、肩関節を安定させる働きも持っています。
肩関節はとてもよく動く関節ですが、その分だけ不安定な構造でもあります。よく例えられるのが、「ゴルフボールをお皿の上に乗せているような状態」というイメージです。
腕の骨(上腕骨)の頭は丸い形をしていて、肩甲骨の関節のくぼみに乗っているだけの構造になっています。
棘上筋は、この上腕骨の頭を関節の中心に引き寄せるように働き、肩関節が安定した状態で動くようにサポートしています。棘上筋は「動かす筋肉」であると同時に、肩関節を安定させる筋肉でもあるのです。
三角筋との関係
腕を横に上げる動きでは、棘上筋だけでなく三角筋も一緒に働いています。
三角筋は、肩の表面にある大きな筋肉で、肩の丸みを作っている筋肉です。
肩の外側を覆うように付いており、腕を上げる動きでは大きな力を発揮します。
日常生活の中でも、
- 洗濯物を干す
- 高い場所の物を取る
- 服を着る
といった動作で、三角筋は活発に働いています。
ただし、腕を上げる動きは三角筋だけで行われているわけではありません。
実際には、棘上筋と三角筋が協力することで、腕をスムーズに持ち上げることができています。
この2つの筋肉には、それぞれ役割の違いがあります。
腕を上げ始めるのは棘上筋
腕を横に上げる動作では、最初に働き始めるのが棘上筋です。
腕を体の横から持ち上げようとすると、まず棘上筋が収縮し、腕をわずかに持ち上げます。その後、三角筋が強く働くことで、腕はさらに上の位置まで持ち上がっていきます。
この関係は、よく次のように説明されます。
- 棘上筋:動きのスタートを作る筋肉
- 三角筋:腕を大きく持ち上げる筋肉
つまり、棘上筋は腕を上げる動きの「きっかけ」を作り、三角筋がその動きをさらに強く引き上げていく、という流れです。
このような役割分担によって、腕を自然でスムーズに上げることができています。
肩関節を安定させる働き
三角筋は、腕を持ち上げる強い力を生み出す筋肉です。
しかし、その力だけで腕を動かすと、腕の骨(上腕骨)が上方向へ押し上げられてしまうことがあります。
肩関節は、丸い骨(上腕骨頭)が肩甲骨のくぼみに乗っている構造をしています。そのため、強い力だけが働くと、骨の位置がずれてしまう可能性があるのです。
ここで重要な役割を果たすのが、棘上筋を含む腱板の筋肉です。
腱板の筋肉は、上腕骨の頭を関節の中心へ引き寄せるように働き、骨の位置が安定し、肩関節はスムーズに動くことができます。
つまり、三角筋が腕を上に持ち上げる力を生み出し、腱板(特に棘上筋)がその動きを安定させながらコントロールしているのです。
力と安定のバランス
肩の動きを理解するうえで大切なのは、「力」と「安定」のバランスです。
三角筋は腕を動かすための「力」を生み出す筋肉。一方、棘上筋を含む腱板の筋肉は、関節を安定させる「コントロール」の役割を担っています。
この2つの働きがうまく噛み合うことで、私たちは腕を自由に動かすことができます。
そのため棘上筋と三角筋は、どちらか一方だけが働いているのではなく、互いに協力しながら肩の動きを作り出している筋肉といえるでしょう。
腱板との関係
棘上筋は、肩のインナーマッスルである腱板(ローテーターカフ)を構成する筋肉の一つです。
腱板とは、肩関節を安定させる働きを持つ筋肉のグループのことを指します。
具体的には、次の4つの筋肉から構成されています。
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
これらの筋肉はすべて肩甲骨から始まり、腕の骨である 上腕骨 に付着しています。


特徴的なのは、その配置です。
4つの筋肉は、上腕骨の頭を取り囲むような形で配置されています。まるで腕の骨を包み込むような構造になっているため、肩関節を支える インナーマッスルのグループ として知られています。
肩関節の安定やスムーズな動きは、この腱板の働きによって大きく支えられています。
腱板の役割
腱板の最も重要な役割は、肩関節を安定させることです。
肩関節は、人間の関節の中でも特に可動域の大きい関節です。腕を上げる、回す、後ろに引くなど、さまざまな方向へ自由に動かすことができます。
しかし、その自由度の高さは、同時に不安定さも生み出します。
肩関節は、丸い形をした腕の骨(上腕骨頭)が、肩甲骨の関節のくぼみ(関節窩)に乗っている構造になっています。この構造は、よく「ゴルフボールがティーの上に乗っている状態」に例えられます。
つまり肩関節は、動きやすい反面、骨だけでは安定しにくい構造になっているのです。
そこで重要な働きをするのが腱板です。
腱板の筋肉は、上腕骨の頭を関節の中心に引き寄せるように働きます。
この働きによって、腕を動かすときにも骨の位置が安定し、肩関節がスムーズに動くようになります。


言い換えると、腱板は 肩関節の動きをコントロールする筋肉ともいえるでしょう。
腱板の中でも重要な棘上筋
腱板を構成する4つの筋肉の中でも、棘上筋は特に重要な役割を持つ筋肉とされています。
その理由の一つは、腕を上げる動きの初期に関わっていることです。
腕を横に上げる動きでは、最初に棘上筋が働き始め、その後に三角筋が強く働くことで腕がさらに持ち上がっていきます。
つまり棘上筋は、腕を上げる動きの スタートを作る筋肉でもあるのです。

もう一つの理由は、棘上筋が肩関節の 上側で関節を支える位置にあるという点です。
棘上筋の腱は、肩関節の上を通って上腕骨に付着しています。この位置関係のため、腕を動かす際に肩関節の安定を保つ重要な役割を担っています。
その一方で、この場所は構造的に負担がかかりやすい部分でもあります。
肩峰の下を通る棘上筋の腱は、腕を上げる動作の中で圧迫を受けやすく、長年の使用や繰り返しの動作によって負担が蓄積することがあります。
こうした理由から、腱板のトラブルの中でも 棘上筋が関係するケースが多いといわれています。肩の動きを理解するうえで、棘上筋は腱板の中でも特に重要な筋肉の一つといえるでしょう。
まとめ
今回は、肩の筋肉の一つである 棘上筋(きょくじょうきん) について解説しました。
棘上筋は、肩関節の奥にある筋肉で、肩のインナーマッスルとして知られる 腱板(ローテーターカフ) を構成する筋肉の一つです。
腱板は、
- 棘上筋
- 棘下筋
- 小円筋
- 肩甲下筋
という4つの筋肉によって構成されています。
これらの筋肉は肩甲骨から始まり、腕の骨である上腕骨に付着しています。そして上腕骨の頭を包み込むような形で配置されることで、肩関節を内側から支えています。
肩関節は、人間の関節の中でも特に可動域が大きい関節です。腕を上げる、回す、後ろへ引くなど、さまざまな方向へ自由に動かすことができます。
しかし、その自由度の高さは同時に不安定さも生み出します。腕の骨(上腕骨頭)は丸い形をしており、肩甲骨の関節のくぼみに乗っているだけの構造だからです。
この不安定な肩関節を安定させながら動かすために働いているのが、腱板の筋肉です。
その中でも棘上筋は、
- 腕を横に上げ始める動き
- 肩関節の安定
といった役割に関わる重要な筋肉です。
腕を上げる動作では、棘上筋が動きのきっかけを作り、その後に三角筋が強く働くことで腕がさらに上まで持ち上がっていきます。つまり棘上筋は、三角筋と協力しながら肩の動きを支えている筋肉といえるでしょう。
普段の生活の中で棘上筋を意識することはあまりありません。しかし、私たちが腕をスムーズに動かすことができるのは、このようなインナーマッスルが関節を安定させているからです。
肩の動きを理解するうえで、棘上筋は非常に重要な筋肉の一つです。
肩関節の仕組みを知ることは、肩の動きや体の使い方を理解するうえでも大きなヒントになります。
今回の記事が、肩の筋肉や体の仕組みについて理解するきっかけになれば嬉しく思います。


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